異文化間能力を伸ばす
新しい異文化理解教育

-科学研究費助成研究-

代表研究者 松本佳穂子
東京学芸大学 教職大学院研究員・東海大学 元教授・専修大学非常勤講師

わが国では、グローバル化する世界に対応できる柔軟で批判的な思考力やコミュニケーション能力は、何でも「人間力」という曖昧な表現に含めて語られることが多い。
しかし、ヨーロッパにおける試みや研究が目指すのは、多文化・多言語の状況での問題解決に必要なクリティカル・シンキングを伴う異文化間能力の構成要素を明確にし、それを各国で共有して教育を行おうというものである。
日本においても、多様な異文化状況で働く「グローバル人材」にどのような能力が必要であり、それをどのように育成すべきかについて体系的な指標や方法論を構築することが喫緊の課題となっている。

私たちの目指す異文化理解教育とは?

「異文化理解教育」と言われるものは、これまでも行われてきましたが、特に教育的指標やモデルがあったわけではなく、それぞれの状況の教育的ニーズや教師の信じるところに基づいて展開されて来ました。

このサイトでは、私たちが5つの科研費研究を通じて、言語も文化も全く違う人々が共存しているヨーロッパのモデル(複言語・複文化的アプローチ)を基に、日本の学生向けの体系的な指標・教材・評価ツールの開発を進めてきたプロセスをご紹介します。3つの基盤研究B(2010-2013, 2016-2019, 2021-2023)では、取り組む課題がクリティカル・シンキングから異文化間能力(異文化対処能力)へ、そして現在は民主的なグローバル市民の育成へとシフトしてきました。それと並行して、2つの挑戦的萌芽研究(2016-2018, 2021-現在)では、日本において将来の「グローバル人材」を育てるためのより現実に即した指標と評価ツールを開発しています。