AIEとは?

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 最初の科研費研究(基盤B: 2010年-2013年)では、言語も文化も全く違う人々が共存しているヨーロッパのモデル(複言語・複文化的アプローチ)を基に、日本の学生向けの体系的な指標・教材・評価ツールの開発をしました。ただ、「異文化間能力(Intercultural Competence)」は、知識として教え込めば習得されるものではなく、疑似体験を含む様々な「自分にとっての他者(Other)」との遭遇から試行錯誤で得られていく、異文化に対処する態度や問題解決能力などを包含するものです。そこで、次の科研費研究(基盤B:2016-2019)では、異文化やそこに属する他者への意識を高めるために、生徒の内面に働きかけるヨーロッパの省察的ツール「Autobiography of Intercultural Encounters(AIE)」を使って、小学校から大学までの各レベルに合った具体的な授業モデルを開発してきました。

私たちの目指す異文化理解教育とAIE

 自分に影響を与えた異文化遭遇経験について、さまざまな側面から9セクション、約50問の質問に答えます(問題数は時々追加質問がなされるので人によって変わってきますがおおよそ1時間ぐらいかかります)。似たような質問を違う角度から何度もすることで、同じ事象や自分のした判断を再考させるように作られているため、かなり多くの大学生が最初に直観で答えたことを考え直したり、ネガティブにとらえていたことを訂正したりする様子、つまり解答経過における感じ方、考え方の変化がよくわかります。もちろんもともと持っていたステレオタイプや偏見が変わらないような例もありますが、そういう場合でも、回答者の意識の中にはこれらの多くの質問が考えさせようとしたことが残るので、それが、次の異文化との遭遇に生かせればいいのです。この教師が介入しない自省的活動が自分でできるように、ツールを日本語に訳しました(/pdf/enquete-2.pdf)。ご自分の研究に使用される時は、Google Formsなどを使って回答を集約できるようにするといいでしょう。

 小学生と中学生には10問前後からなる間便版を日本語に訳して使っています。特に小学校低学年の場合は、なかなか思ったことを書いて表現できなかったりするため、インタビュー形式にする場合もあります。また、ヨーロッパ評議会のウェブサイトにはAIEの有効で有意義な使用方法を学べる教師用のオンライン・コースも公開されており、なかなか異文化との遭遇というものが想像できない年少者向けに画像付きのツール(Images of Others)も提供されています。
https://www.coe.int/en/web/autobiography-intercultural-encounters

 本研究では、様々な年齢の生徒や学生が印象的で心に残っていると感じる異文化との遭遇に関する記述や反応をこのツールを使って収集し、年齢別の傾向やその他の属性による特徴を見るためにテキスト・マイニングの手法を使って分析をしました。主に、KH Coder (樋口晃一先生が作られたフリーソフト)によって、表現の頻度や共起関係を基に下の図のように回答者の特徴的な傾向を探って行きました。